平 成 29 年 度
試験問題(記述式)
理
科
(化学)
(注意) 解答はすべて別紙解答用紙の定められた欄に書くこと。
文章を読み,各問に答えよ。計算問題の答は有効数字2桁で記し,問1∼問3は計算過程も示せ。気体はすべて理想気体と
して扱えるものとし,その比熱は温度によらず一定とする。気体定数 8.31kJ/(mol・K)= 8.31×10Pa・L/(mol・K)。原子
量 H= 1.0,N= 14.0,O= 16.0
〔Ⅰ〕 五酸化二窒素N2O5の気体状態での 解に対して,以下の多段階の反応機構が提案されている。
N2O5 N2O3 + O2 ⑴
N2O3 NO+ NO2 ⑵
N2O5 + NO 3NO2 ⑶
式⑴から⑶を足し合わせると,2N2O5 4NO2 + O2がえられる。式⑴の反応は他の反応に比べて非常に遅いので,全
体の 解反応の反応速度式はv =k[N2O5]で表される。
下表は容積一定の密閉容器に閉じ込めたN2O5の 37℃ における 圧の時間経過を示したものである。
時間(s) 圧(Pa)
0 112.3
1,000 94.5
2,000 79.5
3,000 66.9
問1 表の 1,000∼2,000sの区間における平 反応速度と平 濃度を用いて,反応速度定数k を求めよ。
問2 N2O5 圧が 62.0Paのときの酸素 子O2の生成速度を求めよ。
問3 N2O5 2NO2 +
1
2O2反応の反応熱を計算せよ。ただし,N2とO2の結合エネルギーはそれぞれ 942kJ/mol,494
kJ/molであり,二酸化窒素NO2(気)1molを原子N(気)1molと原子O(気)2molに 解するのに必要なエネル
ギーは 932kJ/molとする。また,N2O5の生成熱は−11kJ/molとする。
問4 N2O5の 解反応に関して記述内容が最も適当なのはどれか。記号で解答欄に記せ。
(ア) 反応温度を上げると,活性化エネルギーが低下し,反応速度定数は大きくなる。
(イ) 式⑵の反応の活性化エネルギーは式⑴の反応の活性化エネルギーより大きい。
(ウ) 時間0sにおけるN2O5 圧を増加させても,反応速度定数の値は変化しない。
(エ) 時間の経過とともに 圧の低下が緩やかになるのは,活性化エネルギーが変化するからである。
(ページ数)
〔Ⅱ〕 図は水の状態図を模式的に示したものであり,いろいろな温度,圧力において水H2Oがどの様な状態にあるかを示して
いる。OXは昇華圧曲線,OYは融解曲線,OZは蒸気圧曲線という。
問5 容積を変えることのできる密閉容器をH2Oで満たし,点aで表される状態から点bまで温度を一定に保ったまま圧力
をゆっくりと上げた。このときの圧力と体積の関係を表すグラフの概形を,記入例1にならって解答用紙に記入せよ。
問6 容積を変えて圧力を一定に保つことができる密閉容器を 180gのH2Oで満たし,点cで表される状態(70℃,2.05
×10Pa)においた。このときのH2Oの体積は 0.191Lであった。この状態から,圧力を一定に保ったまま,OZ曲線上
の点d(120℃,2.05×10Pa)を経て,点e(170℃,2.05×10Pa)まで温度を上昇させた。この状態変化に 452kJの
熱エネルギーを必要とした。点cから点eまでの状態変化について,加えた熱エネルギーと体積の関係を表すグラフの
概形を,記入例2にならって解答用紙に記入せよ。また,状態を示す数値も記入例2にならって記入せよ。ただし,液
体のH2Oの密度と比熱は一定とし,比熱の値は 4.2J/(g・K)とする。また,2.05×10Paにおける蒸発熱を 39.6kJ/mol
とする。
問7 点fで表される状態から点gで表される状態に,温度を一定に保ったまま圧力を変化させてOY曲線を横切るとき,
体積はどうなるか。ルシャトリエの原理によって説明せよ。 〔×10Pa〕 Y
g b Z
c d e
f
X
70 120170 〔℃〕 温度
圧 力
2.05
O
a
圧力 体
積
b a
〔L〕
2.0×10
0.191 体
積
5.1×10
c
e
0 2.2×10 452 〔kJ〕 加えた熱エネルギー
以下の問題で必要があれば,相対質量として次の値を用いよ。相対質量: H= 1.0, C= 12.0
〔Ⅰ〕 次の文章を読み,各問に答えよ。
ハロゲンの単体はいずれも (ア) 結合からなる二原子 子で,有色・有毒の物質である。実験室で塩素を作るには①酸化
マンガン(Ⅳ)に濃塩酸を加えて加熱する方法や,②高度さらし (Ca(ClO)・2H O)に塩酸を加えて塩素を発生させる方法が
ある。工業的には (イ) 水溶液の電気 解でつくられる。
単体の臭素は③希硫酸中,臭化カリウムを酸化マンガン(Ⅳ)で酸化すると得られる。また,臭化カリウム水溶液に塩素水を加
えると単体の臭素が遊離する。
問1 (ア) に語句を, (イ) には化学式をそれぞれ記せ。
問2 下線部①∼③の反応式を記せ。
問3
⑴ 下線部①の反応により乾燥した純粋な塩素を得るため,下図のような装置を用いた。洗気瓶に入っている物質Aと物
質Bは何か。名称で答えよ。また,それらを用いる理由をそれぞれ答えよ。
⑵ 生成した塩素の捕集方法を記せ。
問4 天然に存在するハロゲン元素には同位体が存在し,塩素には Cl(相対質量 35.0)と Cl(相対質量 37.0)の同位体
が約3:1で,また臭素には Br(相対質量 79.0)と Br(相対質量 81.0)の同位体が約1:1で存在する。そのため,
ハロゲン置換された炭化水素には,相対質量の異なる 子が同位体の存在比を反映して複数存在する。例えば,水素原
子と炭素原子が Hと Cのみとするならば,CH CH CH Clには相対質量 78.0と相対質量 80.0の 子が約3:1で
存在することになる。
CH ClCHBrにも相対質量が異なる 子が数種類存在する。これらの 子それぞれの相対質量とその存在比を,解答
欄の表記例にならって整数で記せ。ただし,水素原子と炭素原子は Hと Cのみとする。 捕集装置 (捕集方法) 濃塩酸
濃塩酸
物質A 物質B
洗気瓶 洗気瓶 逆流安全瓶
〔Ⅱ〕 次の文章を読み,各問に答えよ。
炭素とケイ素は周期表の 14族に属する非金属元素である。これらの原子は (ア) 個の価電子をもち,一般に共有結合の
化合物を作る。ケイ素の酸化物 (イ) は自然界では,おもに石英として存在し,石英の透明な大きな結晶を (ウ) ,
風化などによって細かくなった砂状のものを (エ) という。 (イ) を水酸化ナトリウムと混合して融解すると
(オ) となり,さらに (オ) に水を加えて加熱すると,水ガラスと呼ばれる無色透明の粘性の大きな液体が得られる。
水ガラスの水溶液に希塩酸を加えると, (カ) と呼ばれる白色ゲル状沈殿が生成する。さらに, (カ) を加熱して脱水
するとシリカゲルになる。①シリカゲルは乾燥剤や吸着剤として利用される。
一方,炭素の酸化物である二酸化炭素は水に少し溶けて炭酸水となる。二酸化炭素を②石灰水に通じると白色沈殿を生じる
が,③二酸化炭素を過剰に通じると沈殿は溶解し,再び透明な液体となる。
問5 (ア) ∼ (カ) に当てはまる語句を記せ。ただし, (イ) と (オ) は化学式で答えよ。
問6 下線部①の用途が可能である理由を 50字程度で記せ。
〔Ⅰ〕 次の⑴∼⑸の記述を読み,各問に答えよ。
⑴ グルコースは 子式C6H12O6の単糖類であり,発酵によりエタノールや⃝ア乳酸を生成する。
⑵ グルコースは⃝イ無水酢酸と反応する。
⑶ グルコースは,水溶液中では3種類の⃝ウ異性体A,B,Cが平衡状態で存在している。
⑷ グルコース水溶液が還元性を示すのは,異性体Aが存在するためである。
⑸ 二糖類である⃝エスクロースは,⃝オ異性体Bとβ−フルクトースが脱水縮合した構造をもつ。
問1 下線部⃝アの乳酸には互いに鏡像異性体である2種類の異性体が存在する。この2種類の異性体の化学構造式を互いに
鏡像の関係にあることがわかるように記せ。なお,化学構造式はくさび形表示を用いた次の例にならって答えよ。ただ
し,図中の実線で表わされた結合は紙面と同平面,実線のくさび形(太い線)で表された結合は紙面の手前,破線のく
さび形で表された結合は紙面の向こう(裏)側にあることを示す。
問2 下線部⃝イの化学反応において,グルコース1molに対して反応する無水酢酸は約何molか整数で記せ。
問3 下線部⃝イの化学反応において,反応前後で変化した官能基の化学構造を次の例にならって記せ。
記入例 ―CH3,―SO2OCH3
問4 下線部⃝ウの異性体A,B,Cの化学構造式を立体構造がわかるように次の例にならってそれぞれ記せ。
問5 下線部⃝エのスクロース水溶液は還元性を示さない。その理由を記せ。
問6 下線部⃝エのスクロースは酵素の作用により 解し,グルコースとフルクトースの等量混合物を与える。この酵素の名
称は何か,また,得られる等量混合物のことを何というか,それぞれ記せ。
問7 下線部⃝オの脱水縮合により形成される結合の 称を記せ。 HO CH3
H CH3 C C H Cl 化学構造式例
H CH2CH2CH3
〔Ⅱ〕 炭化水素化合物A,B,Cに関する次の⑴∼⑺の記述を読み,各問に答えよ。
必要があれば,原子量として,H= 1.0,C= 12.0,O= 16.0を用いること。
化学構造式および化学反応式は次の例にならって答えよ。ただし,立体異性体は 慮しなくてよい。
⑴ 化合物A,B,Cは互いに構造異性体の関係にある。
⑵ 化合物Aは,高温高圧下ニッケルを触媒として,ベンゼンが水素と完全に反応することにより得られる。
⑶ 化合物Bを低温にてオゾンと反応させた後,亜 を作用させると,ともにカルボニル化合物の化合物Fと化合物Gが
生成した。なお,この反応は次式のように進行するものとする。ただし,R1
∼R4
はアルキル基または水素とする。
⑷ 化合物Cを⑶と同様に反応させたところ,同じくカルボニル化合物の化合物Fと化合物Hが生成した。
⑸ 化合物Gは還元性を示さなかったが,化合物Fと化合物Hは還元性を示した。
⑹ 化合物F,化合物G及び化合物Hは,いずれも枝 かれ( 枝)構造をもたない。
⑺ 72mgの化合物Hを完全燃焼させると,176mgの二酸化炭素と 72mgの水が生成した。
問8 化合物Aの 子式と化合物名を記せ。
問9 ⑵の下線部の反応と関連して,ベンゼンの反応性について記述した次の文章を読み,空欄 (ア) と (イ) に
あてはまる適語を記せ。
ベンゼンは,非常に安定な環構造をもつため,水素との反応により化合物Aを生じるような (ア) 反応よりも,
塩素と鉄 を作用させてクロロベンゼンを生じるような (イ) 反応を起こしやすい。
問10 化合物Bおよび化合物Cの化学構造式を記せ。
問11 化合物Hの完全燃焼の化学反応式を記せ。 CH3 CH CH CH2 C O
HOH2C CH3COOH 2O2 2CO2 2H2O
化学構造式例 化学反応式例
R3 R4 C O O C R1 R2 Zn 還元 O3
酸化 化合物B